書評: ケーキの切れない非行少年たち

映画 Primal Fear (真実の行方) が好きです。

先日、漫画でダークトライアドというものを知った。犯罪心理はおもしろ。ふと読みたい本リストに本書が登録されているのを思い出したが図書館は全部貸し出しだったので、我慢できず購入することにした。(本書とダークトライアドは関係なかったが!!) 並行して読んでいる “欠乏行動心理学” と “SNS で怒り狂う人たち” と内容が重なる箇所があり大変おもしろい一冊。

結論

学校教育を変えるべきだとある。教師の性犯罪率も考慮しての学校教育全体の見直しが必要だな※ 教師の犯罪率の高さについては「悪いヤツらは何を考えているのか」を参照加えて、これこそ、AI による診断が導入されるべきだな。小学 2 年時点、少年鑑別所などで。

疑問: 高齢出産が増えると、犯罪者が増えるのか?

  • 2014 年に資料: 知的障害児の増加と出生時体重ならびに母年齢との関連 (岡本悦司)
    • 母年齢、児体重。中度知的障害児の発生率は比例する
    • 29 歳を堺に増加率も増し、31 歳を超えるとさらに増加する傾向が見られる
  • 本書の内容を踏まえると、高齢出産は “幼少期に SOS を発していた少年たち (後に犯罪者へ)” が増えることになる。上記の PDF にも記されているが、関連は確実のようだ。知的障害の認知度が増加したこともしかり
  • おそらく、検査方法の進化で顕現化してきたんだろう。難病と呼ばれるものがそうであるように

疑問: “適切” など曖昧な定義はだめか

  • 認識機能トレーニング次第ではそれも可だろう

メモ

  • 考え方を変えることで好ましい行動につなげていく認知行動療法で性加害者への治療
    • そもそも知的な欠陥 (発達障害や知的障害) を併せ持っている
    • 認知行動療法は “認知機能に問題なし” が前提の手法
      • 解決は対処療法 (投薬のみ)、医師が超多忙すぎる
  • 歪んだ思考 ex) 実は女性は襲われたいと思っている
  • 三重県の医療少年院 … 知的な欠陥がある少年たちが集められる矯正施設
  • 矯正施設では女子でも少年と統一で呼ぶ
  • Rey 複雑図形の模写
    • 歪んで見えると想定 = 見る力、聞く力が弱い可能性がある
    • また、見えないものを想像する力もとても弱い
  • もちろん、障害があることが犯罪行為の免罪符にはならない
  • 傾向
    • 見る力、聞く力、見えないものを想像する力もとても弱い
    • 矯正施設の少年たち診察履歴はほぼない
      • 保護者・養育環境はよくない
      • そういった保護者が少年たちを病院へ連れて行くことはない
    • 苦手なことは?と聞くと、勉強、人と話すこと、と返答
    • 小学 2 年生頃から勉強についていけない
    • 少年鑑別所ではじめて障害があることをわかる
    • 勉強が楽しくない (また、よい指導者にめぐりあえていない)、だが、勉強が嫌いというわけではない
    • 非行に対してひたすら “反省” を強いられていた
    • 思いつきで行動。見通しは立てれない
    • 何に対してもイライラする。感情を表す言葉でイライラしか知らない
    • 8 割の少年が「自分はやさしい人間」と認知
      • XX を殺したね?と聞くと、「あー、やさしくないです」と答える
      • そこまで言わないと気づかない
    • 人を殺してみたい少年が多数
    • 性犯罪が多い。特に幼児をターゲットとした強制わいせつ事件
      • ex) (相手が) 9 歳を超えると怖い
      • 9 歳の壁というのがある。壁を超えると想像力がつき、急激に発達して口達者になる
    • AV に影響される。強姦ものを見て相手も喜んでいるという認識になる
  • 特徴: 5点 + 1: これらは小学 2 年生ころから見え始める
    • 1. 認知機能の弱さ: 見たり聞いたり想像する力が弱い
      • 正しい情報のインプットができないため、アウトプットがバグる
      • 他者から見れば、ふざけている、やる気がない、嘘をつく、と映る
      • ex) 鬼ごっこに参加しようとして、嫌われていると勘違い
      • 想像力の中で “時間” の概念の理解がなければ努力しない
      • よって、ソーシャルスキルトレーニングも意味がない
    • 2. 感情統制の弱さ: 感情を制御するのが苦手、すぐキレる
      • 人はストレスが溜まるもの、その発散方法が犯罪になってしまう
      • もやもやとして気持ちの整理・理解はできない
      • 95% がイジメの被害にあっていた。そして、イジメ被害が一番のストレスである
      • 怒りの元になる一般的なものは “馬鹿にされた”、”自分の思い通りにならない”
      • 自分に自信がないため、他者の指摘を馬鹿にされたと受け取る 
      • 歪んだ自己愛や固定観念が強いため、他者へ期待する
        • よくアンガーコントロールで聞くやつか
      • ○○したい。○○したいを下げる
    • 3. 融通の効かなさ: 思いつきで行動、予想外のことに弱い
      • ex) 水でコルクうかす思考実験
      • つまり、常時欠乏状態 (トンネリング) であるといえるな
      • 時間をかけて思考できない。すぐに結論を出してしまう
    • 4. 不適切な自己評価: 自分の問題点がわからんい、自信があり or なさすぎる
      • 「自分を変えたい」はない
      • 殺人をしても自分はやさしいと自己評価
      • 適切な自己評価は他者との適切な関係性の中でのみ育つ
      • ひとりでは「本当の自分の姿」はわからない
        • 相手の反応がフィードバックになるから
        • そのフィードバックが、前述した認知機能の弱さから誤ったインプットとなる
      • 自己肯定感が低いと、前述したように「馬鹿にされた」となる
    • 5. 対人スキルの乏しさ: コミュニケーションが苦手
      • 対人トラブルはストレスの要因
      • コミュニケーションはとれないが認めてもらいたいために、奇をてらうことがある
      • 第三次産業のサービス業が 7 割になる現代では、コミュニケーションスキルが乏しくても、そういった仕事につかねばならない
    • +1. 身体的不器用さ: 力加減ができない、身体をうまく使えない。運動経験者などは該当しないため +1 とする
      • テストの点数は隠せばいいが、身体的不器用さは隠しようがない
      • 力加減ができない、物をよく壊す、左右が分からない、姿勢が悪い、じっと座っていられない
        • ex) これで車の運転をするとアクセス踏み抜いたりする
  • 教育現場
    • 「苦手なことをそれ以上させない」は子どもの可能性を潰す
    • “褒める”、”話を聞いてあげる” 教育は問題の先送り (根本解決になっていない)
      • ex) 週イチで忘れ物をする子
      • そのまま大人になり社会に出ると「誰も褒めてくれない、話を聞いてくれない」となる
    • 基礎的な認知能力を評価し、そこをトレーニングする支援がない
  • 実行機能 … 専門用語。後先のことを考える力、計画力
  • BADS (遂行機能障害症候群の行動評価) … 高次脳機能障害などの脳損傷患者の遂行機能の評価方法として開発された
  • 療育をしたかった、と自らその必要性を感じ訴え続けていた
  • そもそも親が理解していない、気づかない
    • ex) 子どもが殺人を犯しても「やられたらやりかえせ!」と教えてきたとすごむ親
  • ケーキの切れない非行少年たち: 4 次障害
  • IQ 85 未満で知的障害とすると、全体の 16% が該当とあまりに多すぎるため、1970 年以降は IQ70 未満 (2%) となった
    • 定義変えても解決になっていない。70 ~ 84 の境界知能の子どもたちは理解されないまま放置
    • クラスの 5/35 人 (14%) がかつての IQ 85 以下にあたる事実
    • 最新の DSM-5 による知的障害の診断基準では IQ の値はない
    • しかし、IQ 100 ないと社会で生きるのはしんどいと言われる
  • 軽度の知的障害は気づかれず、診断もつかないことが多い
  • H25 – H30 の 5 年間で、療育手帳取得者が 2 倍になった。これは知的障害に対する認知度が高まった結果
  • 逮捕される前に、早い段階で彼らのサインをキャッチすること
  • 子どものときは教師がいるが、社会に出ると…
  • いい大人が犯す理解できない犯罪が大人になった彼らのケース
    • ex) 元陸上自衛隊員、大型一種。診察券を遺体と一緒に入れ身元バレ
  • 社会での彼らの特徴
    • 所得が少ない、雇用率が低い、貧困率が高い
    • 片親が多い
    • 運転免許の取得が困難
    • 栄養不足、肥満率が高い
    • 孤独になりやすい
    • 問題行動を起こしやすい
    • 健常者と見分けがつきにくい
      • 特に、軽度知的障害・境界知能をもった人たちが
      • イレギュラーなことが起こると表面化する
  • 虐待する親は、軽度の知的障害と特徴が一致する
    • 育児は予期できないことが多々発生するため、知的障害があるとパニックを起こし、また赤ちゃん・子どもに対して同じ対処を繰り返してしまう
  • 受刑者の約 20% あ軽度知的障害相当 (CAPAS 値: 69 以下) であった
    • なお、判断は医師ではなく職員に委ねられる。CAPS 値が高く評価されていると想定される
    • 少年鑑別所で一度「知的に問題なし」と判断されると、法務教官は勝手に訂正できない
    • 結果、暴れる → 精神科医登場で精神科役投与 → 投与量増加 → 出所後に薬なしでは生活できない患者になり、人生台無し
  • 自尊感情の高い低いではなく、実情と乖離していることが問題
  • WISC … 知能検査。結果が IQ 。著者にいわせればザル検査
    • 検査を受けたばかりに逆に支援を受けられなくなる子どもを沢山つくってしまう
    • 「知的に問題ない」が問題を生む
      • 怠けているだけ、性格の問題、育て方の問題などと対処される
  • 医師は学習障害・軽度知的障害や境界知能の子どもらへの対処を知らない。そういう子どもたちが病院にこないからだ
    • 心理士に相談しよう
  • 入院後 8 ヶ月すると客観視できるよになる少年もいる
    • 一般的な加害者だろう
  • 責任、成功体験を積み重ねれば、あるいは、う~む
  • 鏡で自分を見る・自分の声をきくことで自己に注意を向けられる
  • コグトレ (認知機能強化トレーニング)
  • やはり前頭葉か
  • 性犯罪はある種の発達上の問題と想定
  • 受刑者一人を養うコスト: 施設運用費 + 人件費 + 諸経費 = 300 万円/年
    • 参) H29 刑事施設の収容人員は 56,000 人
    • 犯罪者による損害額はばからにならない
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